「神崎さん、新しい性感帯に、ご興味は?」
いつもの行きつけの、完全紹介制サロンのセラピスト――白衣を纏ったその男は、私の身体の全てを知り尽くしたゴッドハンドであり、そして同時に、私の知的好奇心を的確に刺激する術を知り抜いた、狡猾な研究者でもある。
「新しい、性感帯ですって…?」
外資系戦略コンサルタントとして、常に新規市場やブルーオーシャン戦略を追い求める私にとって、その言葉は抗いがたい魅力を持っていた。ましてや、それが私自身の身体という、最も身近で、最も深遠なフロンティアに関するものであるならば、なおさらだ。
「ええ。最近、一部の専門家の間で囁かれている領域でしてね…【スペンス乳腺】と呼ばれています」
スペンス乳腺。
初めて聞く単語だわ。医学的には乳腺組織が腋窩(わきのした)まで伸びた部分を指す言葉のはず。それが、性感帯…?
彼の言葉は、私の脳の報酬系を直接刺激した。ドーパミンが駆け巡るのを感じる。これは、新たな知識と未知の快感に対する、純粋な渇望だ。
「面白いわね。ぜひ、その…『開発』とやらを、お願いできるかしら?」
私の申し出に、彼は満足そうに微笑んだ。その目が、私をクライアントとしてではなく、極上の実験対象として見ていることに、私の奥深くが疼き始める。
施術台に横たわると、まずは全身の緊張を解すように、オイルを使った丁寧なマッサージが始まった。彼の指先が、私の肌をゆっくりと滑っていく。
(…このタッチ、秒速およそ5cm…)
私の脳裏に、先日読み耽っていた神経科学のレポートの一節が浮かび上がる。これは、痛みではなく「情動的な快感」を脳に伝える、特殊な神経線- C触覚線維を最も活性化させる速度なのよね 。ただのマッサージではない。これは、私の理性の鎧を一枚ずつ剥がしていく、計算され尽くした神経ハックだわ。
指はゆっくりと、しかし確実に目的地へと向かってくる。太もも、下腹部、そして、ついに胸の谷間へ。彼の指が私の乳房の輪郭をなぞった瞬間、びくり、と身体が震えた。
「神崎さん、ご存知ですか? 乳首への刺激が、あなたの脳のどの領域を活性化させるか」
「え…?」
「fMRI研究によれば、乳首への刺激は、脳の感覚野において、クリトリスや膣への刺激と全く同じ領域を興奮させることが証明されているんですよ。つまり、あなたの脳にとって、今から私が触れるここは、もう一つの性器なのです」
その言葉は、まるでこれから始まる儀式の開始を告げるゴングのように、私の身体に響き渡った。
彼の指が、乳輪を優しく撫でる。それだけで、私のクリトリスがじわりと熱を持った。脳が騙されている? いいえ、これは騙されているんじゃない。神経解剖学的に、真実なのよ。私の脳は、今、乳首への刺激を「性器への刺激」として、完全に認識している。
そして、彼が取り出したのは、白く滑らかなフォルムの小さな機械だった。ローター。しかし、私が知っているような安価なものではない。手に持ったときのずっしりとした重みと、極めて静かな作動音。
「…ブラシレスモーターね」
「お見事。従来の偏心モーターとは違い、効率、寿命、そして何より静音性と制御の精度が格段に上です。これからあなたのスペンス乳腺を開発するために、μm単位の精密な刺激が必要になりますから」
彼はそう言うと、その高性能なローターの先端を、私の乳首にそっと当てた。
「ひゃぅっ…!」
スイッチが入った瞬間、私の口から甘い悲鳴が漏れた。それは、暴力的な振動ではなかった。まるで、無数の小さな指先が、私の乳首の粘膜を高速で、しかし優しくタッピングしているかのような…信じられないほど繊細で、複雑な刺激。
「このローターには、何十種類もの振動パターンがプログラミングされています。弱いパルスから徐々にクレッシェンドしていく波、リズミカルなタッピング…これは、神経の『慣れ』、いわゆる神経順応を防ぎ、常にあなたの脳に新鮮な驚きを与え続けるためのロジックです」
彼の解説を聞きながら、私はなすすべもなく快感の波に揺さぶられる。ローターが乳首を刺激するたびに、私の脳の性器感覚野が閃光のようにスパークするのがわかる。もう、めちゃくちゃだった。乳首を弄られているだけなのに、全身が性感帯になったかのように敏感になり、腰が勝手に動き出す。
「さあ、神崎さん。ここからが本番です。あなたの【スペンス乳腺】…乳房のGスポットを、覚醒させましょう」
ローターは乳首から離れ、ゆっくりと乳房の外側、脇の下に近い、少し膨らんだ部分へと移動した。そこが、スペンス乳腺。
「あ…っ、そこ…っ、なに、これぇ…!」
ローターの先端がそこに押し当てられた瞬間、乳首への刺激とは全く質の異なる、深く、鋭い快感が身体の芯を貫いた。乳首が「点」の快感だとしたら、ここは「面」で、そして「深度」のある快感。乳房の奥深くにある、快感の源泉を直接揺さぶられているような感覚。
「スペンス乳腺は、乳腺組織の末端であり、神経が複雑に絡み合っている場所。ここを的確に圧迫しながら振動させることで、乳房全体の感覚神経が共鳴し、爆発的に活性化するのです」
彼の言う通りだった。スペンス乳腺への刺激は、私の乳房全体を、まるで一つの巨大なクリトリスに変えてしまったかのようだった。振動が胸の中心から同心円状に広がり、鎖骨を、首筋を、そして脳天まで駆け上がっていく。
「だめぇ…っ、イク…! 胸だけで、イッちゃう…!!」
私の絶叫と同時に、身体が大きく弓なりになった。乳首だけで、胸だけで、オーガズムの頂きに達してしまった。信じられない体験だった。だが、彼の責めは、まだ終わらない。
「素晴らしい反応だ。では、神崎さん。次のステージへご案内しましょう。『ブレンドオーガズム』です」
彼の手から、もう一つのローターが取り出される。そして、その冷たい先端が、私の濡れそぼったクリトリスに、ぴたり、と当てられた。
「あ〝あ〝あ〝あ〝あ〝ーーーーーッッッ!!!!」
思考が、完全に焼き切れた。
スペンス乳腺を刺激するローターがもたらす、深く広がる快感の波。
クリトリスを刺激するローターがもたらす、鋭く直接的な快感の奔流。
異なる二つの快感情報が、別々の神経経路を通って、私の脳へと殺到する。乳房からの信号は胸部神経を経て、そしてクリトリスからの信号は陰部神経を経て [cite: 2, 7][cite_start]。二つの信号が脳の奥深くで衝突し、融合し、そして、今までに体験したことのない、巨大な快感の渦を生み出す。これこそが、複数の神経経路を同時に活性化させることで生まれる、ブレンドオーガズム [cite: 7]。
「あああああッッ!!! しぬ、死んじゃうのおおぉぉぉ!!!!」
[cite_start]視界が真っ白に染まり、もはや自分がどこにいるのかもわからなくなった。ただ、快感だけがそこにあった。脳が快感に支配され、理性や自己抑制を司る前頭前野の活動が完全にシャットダウンしていくのがわかる [cite: 3]。羞恥心も、プライドも、何もかもが溶けていく。「無我夢中」の状態とは、脳科学的にこれほどまでに正確な表現だったなんて…!
身体がけいれんし、熱い飛沫がシーツを濡らすのがわかった。何度も、何度も。スペンス乳腺とクリトリスの同時攻撃は、私からオーガズムの制御を完全に奪い去った。ローターが止められても、私の身体は快感の余韻に震え、浅い呼吸を繰り返すだけだった。脳が、身体が、もっと強い刺激を求めて疼いている。テクノロジーによる計算され尽くした快感じゃない、もっと生々しくて、原始的な結合を…。
「…せんせ…」
掠れた声で、私は彼を見上げた。目は潤み、思考は快感で麻痺している。でも、本能が叫んでいた。
「…わ、私の…おまんこに…先生の…おちんちんを…ください…っ」
ハーバード卒のコンサルタント、神崎美月の口から、信じられないほど下品な言葉がこぼれ落ちた。でも、もう止められなかった。理性のタガは完全に外れてしまったのだ。
彼は、悪魔のように微笑んだ。
「おやおや。ついに、脳だけでなく身体も正直になりましたか。いいでしょう。あなたのその知的好奇心と身体を、私の全てで満たして差し上げます」
彼がゆっくりと腰を落とし、硬く熱い先端が、私の熱く潤んだ入り口に触れた。
「ひぅっ…!」
その瞬間、電流が走った。ローターとは違う、質量と熱を持った刺激。彼はすぐには入ってこない。先端だけで入り口の粘膜をなぞり、円を描くようにゆっくりと愛撫する。
[cite_start]「神崎さん、膣の入り口付近は、低周波の振動や触圧の変化を感知するマイスナー小体が豊富に存在するんですよ [cite: 2]。こうして、焦らすように刺激することで、あなたの期待感は最高潮に達する」
彼の言う通りだった。じらされればじらされるほど、もっと、もっと奥まで彼を受け入れたいという欲求が膨れ上がっていく。私は腰をくねらせ、彼のものを迎え入れようとするが、彼は巧みにそれをかわし、入り口だけの愛撫を続ける。
「あ…んっ…、はやく…、いれて…くださいぃ…」
「おねだりが上手になりましたね。では、次の領域へ」
ぐ、と少しだけ腰が沈んだ。硬い先端が、私の身体を数センチだけこじ開ける。そして、内壁の、少しざらついた部分をごり、と強く押し上げた。
「あ〝っ! そこ、そこぉっ!」
[cite_start]「ここが、いわゆるGスポット…科学的にはクリトリス-尿道-膣複合体(CUV)と呼ばれる場所です [cite: 20][cite_start]。膣内からの刺激で、クリトリスの内部構造を圧迫しているのですよ。骨盤神経を通じて、先ほどのクリトリスへの刺激とはまた違う、深く広がる快感が脳に送られる [cite: 2]」
彼は先端だけを入れたまま、Gスポットだけを執拗に、的確に刺激し続ける。そのたびに、私の身体は大きく跳ね、脳が内側から直接揺さぶられるような錯覚に陥った。もう、狂ってしまいそうだった。
「だめ、だめぇ…! おかしくなっちゃうから…! おくまで、おくまでぇ…!」
涙声で懇願する私を見て、彼はついに、その全てを解き放った。
ずぶり、と音を立てて、彼の全てが私の最奥まで突き刺さる。子宮の入り口、子宮頸部に、硬い先端がこつん、と当たった。
「あ……ぁ……」
声にならない声が漏れた。それは、今までの快感とは全く次元の違う、衝撃。痛みのような、それでいて全身の力が抜けていくような、不思議な感覚。
[cite_start]「…感じますか、神崎さん。子宮頸部への刺激は、脊髄を介さず、迷走神経を通じて直接あなたの脳幹に信号を送ります [cite: 2, 7]。だから、他の性感帯とは全く違う、全身が弛緩するような、深く、根源的な快感が得られるのです」
彼の腰が、ゆっくりと、しかし力強く動き始める。一突きごとに、私の最奥が的確に抉られ、迷走神経が痺れるような信号を脳へと送り続ける。もはや、思考は存在しなかった。ただ、身体の芯から湧き上がる、抗いがたい快感の津波に飲み込まれていくだけ。
「イく…っ、奥が、おくがイッちゃううぅぅぅ!!!!!」
私の絶叫と共に、子宮がぎゅうっと収縮し、身体の奥底から熱い何かがほとばしった。それは、クリトリスオーガズムとも、Gスポットオーガズムとも違う、魂が抜けていくような、深く、長く続く絶頂だった。
意識が遠のき、深い快感の海に沈んでいく中、私は彼の声を聞いた。
[cite_start]「オキシトシンが大量に放出されていますね [cite: 3]。神崎さん、あなたはもう、私なしではいられない身体になりましたよ…」
その言葉が、私の脳に焼き付いた。
…ああ、なんてこと。
私の身体は、私の脳は、なんて素直で、なんて淫らなのかしら。
テクノロジーと、人間の身体。その二つが組み合わさったとき、快感は無限のフロンティアになる。
私の探求は、まだ始まったばかりなのだわ…。

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