金曜日の夜が、私は一番好きで、一番嫌いだ。
一週間の鎧を脱ぎ捨て、解放される安堵。同時に、静寂の部屋で一人、剥き出しになった欲望と向き合わなければならないから。
今夜も、その欲望は腹の底で、小さな獣のようにグルグルと喉を鳴らしている。
熱いシャワーで、昼間の社会的な私を洗い流す。鏡に映る、湯気で上気した裸の自分。濡れた髪、紅潮した頬、そして、いつもより硬く尖った乳首。鏡の中の女が、私に囁きかける。「今夜は、どうされたいの?」と。
その問いに答えるように、私はPCの前に座った。選んだのは、やはり、あの作品。
『【独占】スペンス乳腺開発クリニックSpecial 楪カレン』
私を何度も翻弄した、罪深い映像。だが、今夜は違う。この作品は、もはや私のための教科書であり、これから始まる儀式のための、荘厳な序曲に過ぎない。
シルクのネグリジェを素肌に纏い、再生ボタンを押す。さあ、始めましょうか。神崎美月の、最も長くて、最も淫らな夜を。
第一章 疼きの序曲
画面の中で、純真な美貌と豊満な肉体を持つ楪カレンさんが、少し緊張した面持ちで施術台に横たわる。その姿は、これから快感の実験台となる生贄のようにも見えて、私の背筋をぞくぞくとさせた。
専門家と名乗る男の手が、彼女の白い肌に触れる。まだ何も始まっていないのに、カレンさんの呼吸が、ほんの少しだけ乱れるのがわかる。
わかるわ、その気持ち。期待と、不安と、ほんの少しの恐怖。それらが混じり合って、身体中の神経を、ぴりぴりと尖らせていくのよね。
私は、まだ自分の身体には触れない。ただ、椅子に深く腰掛け、組んだ脚をそっと揺らしながら、画面に映るすべてを、自分の感覚に焼き付けていく。男の指の動き、カレンさんの表情の微細な変化、漏れ出す吐息の音。そのすべてが、私の身体の中で、ゆっくりと欲望の澱となって積もっていく。
男がオイルを手に取り、カレンさんの豊かな双丘に塗り広げ始めた。オイルで艶めくHカップが、照明を反射してぬらぬらと光る。その光景を網膜に焼き付けながら、私はようやく、自分の指を動かした。
指先が、自分の鎖骨の窪みを、そっと撫でる。そこから、ゆっくりと、胸の谷間へと滑り降りていく。薄いシルクのネグリジェ一枚を隔てただけの、もどかしい感触。生地の上から、自分の心臓の鼓動が、トクン、トクンと指先に伝わってくる。
指は、谷間をさらに下り、みぞおちのあたりを優しく円を描くように撫でる。直接的な場所ではない、その周辺を愛撫されることで、かえって中心部の感度が高まっていく。ああ、もう、胸が張って、苦しいくらい。
私は、ネグリジェの胸元にかかる、細いリボンに指をかけた。焦らすように、ゆっくりと、その結び目を解いていく。リボンがほどけ、合わせ目がふわりと開くと、中に着けていた繊細な黒いレースのブラジャーが姿を現した。
まだ、ブラは外さない。
私は、はだけたネグリジェの間から、カップに包まれたままの自分の乳房を見下ろす。レースの隙間から、肌のぬくもりが立ち上ってくるようだ。指先で、カップの縁をなぞる。ワイヤーの硬質な感触と、その内側にある私の肌の柔らかさの対比が、たまらない。
指を、カップと肌の隙間に、そっと差し入れた。
「んぅ…っ♡」
自分の指なのに、まるで他人の指に触れられたかのように、甘い戦慄が走る。ひんやりとした指先が、ブラの中に閉じ込められて火照った肌に触れた瞬間、脳が蕩けるような快感が広がった。
指の腹で、乳房の丸みに沿って、ゆっくりと円を描く。柔らかく、しかし弾力のある感触。指が乳輪に近づくにつれて、私の呼吸はどんどん浅くなっていく。そして、ついに指先が、硬く尖った乳首の先端に、触れた。
「ひゃっ…♡」
声にならない悲鳴が漏れる。指先で、その硬い蕾を、ころり、ころりと転がす。右に、左に。優しく、優しく。それだけの愛撫で、私の腰が、勝手にくねりと蠢(うごめ)いた。
もう、我慢できない。
私は背中に手を回し、ブラジャーのホックに指をかけた。一つ、そして、もう一つ。小さな金属が外れる音は、私を縛る最後の理性が、プチリと切れた音だった。
肩紐をずらし、ブラジャーを身体から抜き去る。解放された私の双丘は、重力に従って、ぽってりとその姿を現した。鏡に映る自分の姿は、頬を上気させ、瞳を潤ませ、だらしなく喘ぐ、ただの雌の顔をしていた。
私は、画面のカレンさんを真似るように、オイルを手に取った。透明な液体を、自分の乳房の頂点に、とぷり、と垂らす。オイルは、硬くなった乳首の皺に溜まり、そこから溢れると、きらきらと光の筋を描きながら、谷間へと流れ落ちていった。
その光景だけで、下腹部の奥が、きゅううんと締め付けられる。
両手で、オイルに濡れた乳房を、そっと包み込む。むにゅり、と指が沈み込む感触。柔らかいのに、芯がある。自分の身体なのに、まるで知らない極上の果実を味わうような気分だった。
指の腹を使い、スペンス乳腺…脇の下から胸へと繋がる、あの快感の源流を、じっくりと、ねっとりと、解していく。息を吸い込みながら圧をかけ、息を吐きながら緩める。その度に、胸の奥から、じゅわ…っと、甘い痺れが生まれては、全身へと広がっていく。
ああ、だめ…胸だけで、イってしまいそう…。

第二章 蜜の兆し
胸の快感は、熱い奔流となって、私の身体を駆け下りていく。お腹を通り過ぎ、下腹部へ、そして、一番奥深くにある子宮へと到達する。子宮が、きゅん、きゅん、と愛らしく脈打っているのがわかる。
もう、椅子に座ってなどいられない。私は腰を浮かせる。濡れた音を立てながら、内腿と内腿が擦れ合う。ああ、なんて淫らな音。
まだ、下には直接触れない。焦らしは、最高のスパイスだから。
私の指は、オイルで滑る胸を堪能しながらも、もう片方の手は、ゆっくりと、ネグリジェの裾の中へと侵入していく。太ももの内側を、指の甲でそっと撫で上げる。すべすべとした肌の感触。その指が、目的地に近づくにつれて、私の心臓は早鐘を打ち始める。
そして、指先が、しっとりと湿ったパンティーの布地に触れた。
「んっ…♡」
そこは、もう私の欲望の熱で、ぐっしょりと濡れていた。手のひら全体で、その膨らみを、布の上から、むんずと掴む。熱い。信じられないくらい、熱を持っている。指でクロッチ部分をぐりぐりと押し付けると、内側から、じゅわ…じゅわ…と、蜜がさらに湧き出してくるのがわかった。
私は、パンティーのサイドのゴムに、指を引っ掛けた。ゆっくりと、それを引き下ろしていく。レースの布地が、濡れた肌に張り付き、名残惜しそうに離れていく。そして、ついに、私のすべてが、外気に晒された。

恥ずかしい、なんて感情は、もうどこかへ消え去っていた。そこにあるのは、溢れんばかりの蜜で濡れそぼり、赤く腫れ上がった、欲望の塊だけ。
指で、その蜜をすくい取る。とろりとして、きらきらと糸を引く、私の愛液。それを、硬く尖ったクリトリスへと、塗り込んでいく。自分の蜜で、自分を愛撫する。これ以上の背徳が、あるかしら。
「あ…んぅ…っ♡ ねちょ…ねちょ、してるぅ…♡」
指を、小陰唇の間に滑り込ませる。ぬるぬるとした粘膜が、指に絡みついてくるようだ。ひだの間を、優しく開くように撫でる。その奥にある、小さな入り口。そこは、もう、何かを迎え入れる準備が万端に整い、ひくひくと、愛らしく蠢いていた。
ねぇ、私の指だけで、こんなにも蜜が溢れてしまうなんて、信じられる…?
これから始まる、私と『道具』たちの、もっと深くて、もっと淫らな戯れの前に…私がここまで乱れてしまった「きっかけ」を、あなたにも見せてあげる。
この映像こそが、私の理性を溶かした、何よりの証拠。これを見れば、私の身体の熱が、あなたにもきっと伝染するはずよ…
第三章 絶頂への螺旋
指だけでは、もう足りない。この身体の奥で渦巻く、巨大な熱の塊を、鎮めることはできない。
私は、震える手で、ベッドサイドの引き出しを開けた。そこには、私の秘密の共犯者たちが、静かに出番を待っている。まずは、小さくてもパワフルな、私の可愛いローター。
ひんやりとしたプラスチックの感触が、火照った手のひらに心地良い。スイッチを入れる前の、この静寂が、期待感を極限まで高めてくれる。
カチリ、とスイッチを入れる。
「ブーーーーーン…」
低いモーター音が、部屋の静寂を破った。手の中に、微細な振動が伝わってくる。私はまず、その振動する先端を、下腹部に当ててみた。肌の表面から、内臓へと、快い痺れが広がっていく。
そして、ゆっくりと、その先端を、目的地へと近づけていく。
まだ、クリトリスには当てない。その周辺、大陰唇や、小陰唇を、なぞるように刺激する。蜜が、ローターの振動で細かく泡立ち、ぶちゅぶちゅ、と小さな音を立てた。
「ひっ…ぅあ…っ♡」
もう、限界。
私は、ローターの先端を、硬く昂ぶったクリトリスの頂点に、ぴたりと押し当てた。
「あああああああああああああっっっ!!!」
脳天から爪先まで、一瞬で、稲妻が駆け抜けた。視界が、真っ白に弾け飛ぶ。全身が、ビクンッ!ビクンッ!と激しく痙攣し、椅子から転げ落ちそうになる。浅い、しかし強烈な快感の波が、何度も何度も私を襲った。
「いっ、イくぅッ!イっちゃうううううっ!!」
数秒後、波が引き、私はぜぇぜぇと肩で息をしていた。ローターでの絶頂は、短距離走のようだ。激しいけれど、まだ奥にある、本当の渇きは癒やしてくれない。
その渇きを癒やすために、私は、もう一人の共犯者を手にした。太く、長く、硬い、私のディルド。ローションを、その先端に、とぷとぷと惜しげもなく振りかける。私から溢れた蜜と、人工の潤滑剤が混ざり合い、ぬるぬると、いやらしく光っている。
ローターでの絶頂で、さらに敏感になった私の入り口に、その太い先端を、ぐ、と押し当てた。
「んむぅっ…!」
指とは比べ物にならない圧迫感。ひだが押し広げられ、熱い粘膜が、ゆっくりと異物を受け入れていく。ぬるり、ぬるり、と、亀頭の部分が、膣壁を擦りながら侵入してくる。
「おっきい…っ♡おく、おくが、あついぃ…っ♡」

半分ほど飲み込んだところで、一度動きを止める。内側で、ディルドが脈打っているかのような錯覚。私は、自分の手で、ゆっくりと、それを引き抜き始めた。内壁が吸い付くような感覚。そして、また、奥深くへと、沈めていく。
「んっ…ぐ、ぅ…♡あ、ん、あ、んっ…♡」
浅く、ゆっくりとしたピストン運動を繰り返す。その度に、奥にあるGスポットが、ぐり、ぐりと刺激され、私の身体から、また新しい蜜が溢れ出してくる。
そして、ついに、最後の儀式を始める時が来た。
私は、ディルドを、根元まで、深く、深く、自分の奥に突き入れた。子宮の入り口に、先端がこつんと当たる。
その状態で、空いた方の手で、再び、振動するローターを握りしめた。
そして、それを、クリトリスに、強く、押し当てた。
「あああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!!!!!」
内と、外。
Gスポットからの、鈍く、深く、響くような快感。
クリトリスからの、鋭く、激しく、脳を焼くような快感。
二つの快感が、私の身体の中で混ざり合い、渦を巻き、私という存在そのものを、飲み込もうとしていた。もう、自分がどこにいるのかもわからない。画面の中のカレンさんが、白目を剥いて絶頂している。ああ、今の私も、きっと、あんな顔をしているに違いない。
「イく…っ!こんどこそ、ほんとうに、イッちゃううううううううううううううううっっっ!!!!!!」
身体が、勝手に、弓なりに反り返る。ディルドが、Gスポットを抉るように突き上げる。ローターが、クリトリスを殺さんばかりに震え続ける。
そして。
私の身体の奥深くで、何かが、弾けた。
今まで経験したことのない、深く、長く、そしてどこまでも続く、オーガズムの波。一度、二度、三度…子宮が、これでもかというほど激しく収縮し、快感の奔流を、私の全身へと送り出し続ける。
どれくらいの時間が、経ったのだろうか。
この、脳が焼けるような快感の答え…あなたも、知りたくなったんじゃないかしら…?
私をめちゃくちゃにした『スペンス乳腺開発クリニック』…そのすべてを、あなたも確かめてみて…
【結び】
気づけば、ローターは手から滑り落ち、シーツの上で虚しく振動を続けていた。ディルドだけが、まだ私の奥深くに突き刺さったまま、絶頂の余韻を伝えている。
身体からは力が抜け、指一本動かすこともできない。シーツは、私の汗と愛液で、ぐっしょりと濡れている。甘く、むせ返るような匂いが、部屋中に満ちていた。
PCの画面は、もう真っ暗になっていた。エンドロールも、とっくに終わってしまったのだろう。静寂が戻った部屋に、私の、荒い喘ぎ声だけが、響いていた。
私は、ゆっくりと、ディルドを身体から引き抜いた。ぬるり、という生々しい音と共に、私の蜜をたっぷりとまとったそれが、姿を現す。
私は、それを、ただ、ぼんやりと見つめていた。
ねえ、この日記を読んでいる、あなた。
今夜の私、どうだった…?
私の身体の、隅々までを味わい尽くした、この長い夜の物語。
少しは、満足してくれたかしら…?


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