10月10日 『言葉の鞭』
ロジックが支配する世界。それが私の戦場。
パワーポイントの遷移、KPIの進捗、クライアントの眉間の皺。その一つ一つが、私の知性を試すためのハードル。今日もまた、重役たちが居並ぶ会議室で、私は完璧な鎧を纏っていた。淀みなくグラフを解説し、鋭い質問には最適解を即座に提示する。私の声は、温度を持たない情報そのもの。
「…以上をもちまして、来期に向けたストラテジーの骨子とさせていただきます」
プレゼンテーションを締めると、一瞬の静寂の後、まばらな拍手が起こる。満足と、どこか畏怖の念が入り混じった男たちの視線。その中に、数人の粘つくような光があったことに、私は気づかないふりをしていた。彼らが私を「神崎さん」ではなく、評価額の付いた「アセット」として見ていることも、とっくに理解している。それが、このゲームのルール。
会議が終わり、エレベーターホールへと向かう途中、私は聞いてしまった。
給湯室から漏れ聞こえてきた、あの男たちの下卑た声を。
「おい、見たかよ今日の神崎。あのスーツ、パツパツじゃねえか」
「わかる。Fカップは伊達じゃねえよな。あの冷たい顔で、夜はどんな声出すんだろうな?」
「どうせ『やめてください』とか言いながら、腰は振ってんだろ。ああいうエリート女ほど、本当はドMの痴女なんだよ」
「わかるわー。あの女のツンとした顔を歪ませて、『私は淫乱なメス豚です』って言わせてみてえよな」
――やめて。
心臓が、氷の針で刺されたように痛む。違う、これは痛みじゃない。歓喜の疼きだ。
私の完璧な鎧に、初めて生々しい亀裂が入る。脳が拒絶しているのに、身体の芯は正直に熱を持ち始めていた。エレベーターに乗り込み、冷たいステンレスの壁に背中を預ける。下着の中が、じわりと湿度を帯びていくのがわかる。
『ドMの痴女』
その言葉が、私の理性を溶かす呪文になるなんて。
自宅のマンションに帰り着いたのは、日付が変わる少し前。
シャワーを浴びても、あの声が耳から離れない。鏡に映る自分は、いつもの私。けれど、その瞳の奥には、昼間の私にはない、濡れた光が宿っている。
シルクのガウンを羽織り、寝室のベッドへ。けれど、眠れるはずもなかった。
目を閉じれば、会議室にいた男たちの顔が浮かぶ。彼らが、私を囲んでいる。私の完璧なプレゼン資料は床に散らばり、タイトスカートは無造作に捲り上げられている。
「神崎さん、プレゼンは結構だが、お前の価値はそこじゃねえんだよ」
一人が私の顎を掴む。
「お前はただのスケベな女だ。俺たちの前で、その痴女の本性を見せてみろよ」
「ちが…」
「嘘つくんじゃねえよ。もうこんなにビショビショじゃねえか」
別の男の手が、私のガウンの合わせ目から滑り込み、湿った中心部に触れる。ビクッと身体が跳ねると、男たちは下品な笑い声をあげた。
「おいおい、正直な体だな。言葉でイジってやるだけで、こんなに濡らすのか?この淫乱痴女が」
その言葉が、スイッチだった。
もう、抗えない。私は自らガウンをはだけ、彼らの視線という名の鞭を全身で受け止める。
張りのある乳房。きゅっと硬く尖った乳首。男たちの視線が突き刺さるたびに、胸がぞくぞくと疼く。
「いい乳してんな。その美乳、俺たちのおもちゃにしてやるよ」
「乳首なんか、もうカッチカチじゃねえか。どんだけスケベなんだよ、お前」
私は自分の指で、硬くなった乳首をなぞる。それだけで、背筋に電流が走った。
「あ…ぁ…」
声が漏れる。それはもう、コンサルタント・神崎美月の声ではなかった。
そして、私は最も背徳的な場所へと、自らの指を伸ばした。
すでに蜜で滑るそこは、男たちの言葉を待っていた。
「そうだ、自分で触れ。お前の汚ねえマンコが、どれだけ俺たちを欲しがってるか、自分で確かめろ」
指が触れると、そこはもう熱く脈打っていた。
中を探るように指を動かすと、男たちの言葉がさらに激しくなる。
「おい、見てみろよ。指一本でこの感じようだぜ」
「中でヒクヒク動いてるのが見えるようだ。もっと、もっとだ。俺たちの言葉でイってしまえよ、このM女!」
これはもう、私の冷たい指ではない。
彼らの、欲望で膨れ上がった、硬い現実そのものだ。幻想のそれが、私の最も敏感な場所を抉るように突き上げる。
「神崎、お前の壺の中、どうなってるか教えてやろうか?」
男の声が、脳内に直接響く。
「俺の極太が、お前の狭い入口をこじ開けて入ってきてるぞ。どうだ?パンパンに張って苦しいか?」
ああ、苦しい。でも、それがいい。もっと。
私の内壁が、幻想の侵入者に吸い付くように蠢く。その動きさえも、彼らは見逃さない。
「おいおい、中で締め付けてきやがった。そんなに俺のが気持ちいいのか?この淫乱な名器が」
「子宮の入り口までゴツンって当たってるぞ。お前の奥が、俺の先っぽをキュウって咥えて離さねえ。もっと奥まで突いてほしくて、自分で腰振ってるじゃねえか、この痴女が」
幻想の熱と硬さが、私のすべてを支配する。
現実の私の身体は、シーツの上で弓なりになり、小刻みに痙攣を繰り返していた。
「ああ、もう限界か?イキたくて仕方ないって顔してるぞ」
「いいぜ、イカせてやる。俺ので、お前の脳みそをぐちゃぐちゃにしてやる」
「お前のその生意気な頭脳が、俺の精子でいっぱいになるまで、中に出してやるからな!」
その最後の一言が、私の理性の最後の砦を粉々に砕いた。
幻想の奔流が、私の最も奥で、熱く迸る。それは思考を焼き尽くす灼熱の奔流。私の身体が大きく跳ね上がり、喉から獣のような嬌声が迸った。
「あ〝あ〝あ〝ッッ——————!!!」
痙攣が収まらない。
男たちは、絶頂に喘ぐ私を、まだ言葉で嬲り続ける。
「見てみろ、俺のでイキ狂ってやがる」
「お前の壺の中、俺ので真っ白だぞ。ぐちょぐちょになって、俺のをまだヒクヒクと吸い付いてやがる。本当に、どこまでもスケベな女だな、神崎」
その言葉が、最高の褒め言葉だった。
私は、ただの雌。知性もプライドも、すべて彼らの言葉の鞭に打たれ、溶かされてしまった。
シーツにぐったりと身を横たえながら、私は濡れた指先を口元へと運ぶ。
微かに残る、背徳の香り。
…私は、ただの痴女なのだ。
それを認めさせてくれる、もっと汚くて、もっと卑猥な言葉を、この身体は求め続けている。

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