2025年9月29日 秋晴れのローカル線にて
KPI、シナジー、バリュープロポジション…そんな乾いた言葉の羅列に埋もれていた一週間。すり減った思考をリセットするため、今日は有給を取って、房総の海を目指すことにした。片道2時間、ローカル線の旅。非生産的で、目的も曖昧な時間こそ、今の私には必要な処方箋なのよね。
いつもは私の戦闘服である、寸分の隙もないタイトスカートのスーツを脱ぎ捨てて、クローゼットの奥から引っ張り出したのは、胸元が深く開いた黄土色のニットワンピース。身体のラインをこれでもかと拾い上げる、少し悪趣味なくらいにタイトな一着。Fカップの胸の丸みも、自分でも丸いと自覚しているヒップラインも、このニットは忠実にトレースしてしまう。まるで、第二の肌のように。
「今日は、別人になる」
そう心に決めていた。いつもの”神崎美月”という鎧を脱ぎ、ただの”女”になるための小旅行。だから、この格好は必然だった。車窓の風景と…そう、私に向けられるであろう雄たちの視線。それを存分に味わうための、ささやかな舞台装置。ニットという素材は、本当に正直で、そして淫らだわ。見る者の欲望を映し出す鏡のよう。これを着ているだけで、まるで裸を見られているような、背徳的な気分に支配される。
外房線の車両は、平日の昼下がりだけあって人もまばら。私は、対面式のボックスシートにゆったりと腰を下ろした。斜め向かいに座ったのは、くたびれたスーツを着た中年男性。新聞を広げていたけれど、その視線が、時折ちらりと、私の身体をなぞるのを感じる。まずは、胸元へ。そして、組んだ脚の、ミニスカートから伸びる太ももへ。
…計画通りだわ。
気づかないふりをしながら、ゆっくりと脚を組み替えてみる。彼の喉が、ごくりと鳴ったような気がした。もう、新聞に書かれた文字なんて、彼の頭には入ってきていないのでしょうね。その視線は、私のスカートが作り出す僅かな影の中…その奥にあるはずのものを射抜こうとするかのように、粘度を増していく。私が彼のエグゼクティブ・サマリー。今日の彼のすべては、この私に要約される。
私は、読んでいた文庫本を、わざとらしく手から滑り落とした。
「あら…」
小さな声を漏らし、組んでいた脚を解き、腰をかがめる。広がった脚の間から、床に落ちた本へ手を伸ばす。彼の視線が、私の背中と、そして重力に従って大きく開いた胸元に突き刺さるのが、肌で感じられた。今日の私は、この痴女ゲームのために、ハーフカップのブラしか着けていない。おそらく、ほんの一瞬、私の胸の谷間どころか、その頂きの一部…わずかにはみ出た乳輪さえも、彼の網膜に焼き付いたはずだわ。
ゆっくりと身体を起こし、何事もなかったかのように読書に戻るふりをする。けれど、私の身体は正直だった。彼の視線という名のインプットが、私の内部で熱を伴うアウトプットを生成し始めている。
私は、彼にもっとサービスをしてあげることにした。組んでいた脚をそっと解き、ほんの5センチほど、膝と膝の間を開いてみる。光の角度によっては、シルクの黒いパンティーが作り出す、甘美な三角形が見えてしまうかもしれない。その小さな布一枚が、どれほど雄の想像力を掻き立てるか、私は知っている。
首筋に滲んだ汗を拭うふりをして、私は、その指を胸元へと滑り込ませた。ニットと肌の間で、指先がブラジャーの縁に触れる。…ええ、いっそ、もっと見せてあげましょう。指で、ハーフカップのブラを、ほんの少しだけ押し下げた。
その瞬間、薄いニットの生地の上からでも、私の乳首が硬く尖っていくのが、自分でもはっきりと分かった。それはもう、隠しようのない、欲望の形。なんて露骨で、なんて恥ずかしいのかしら。でも、一度押し下げてしまったブラジャーは、もう一度胸元に手を入れなければ、元には戻らない。そんな大胆なこと、さすがにできなかった。
彼の視線は、もう瞬きすら忘れたように、私の胸の一点に固定されている。まるで、私の肌を透視し、その奥の心臓の鼓動まで聞き取ろうとしているかのよう。その視姦が、私をどんどん昂らせていく。乳首がニットと擦れる微かな刺激が、電気信号となって背筋を駆け下り、私の中心…一番奥の、熱い場所へと流れ込んでいく。
…ああ、だめ。もう、濡れてしまっている。
太ももをそっと擦り合わせると、ぬるり、とした生々しい感触。パンティーの中心に、熱い泉が湧き出しているのがわかる。もう、限界だった。
アナウンスが、次の停車駅が「勝浦」であることを告げる。私は、逃げるように席を立ち、電車を降りた。足早に、駅の多目的トイレに駆け込み、内側からガチャリと鍵を掛ける。
鏡に映る自分を見て、息を呑んだ。そこにいたのは、クライアントの前で冷静にプレゼンをする、知的な私ではない。頬を紅潮させ、瞳を潤ませ、口元をだらしなく開いた…淫乱な女の顔だった。
私は便器の上に腰掛けると、衝動のままにニットワンピースを肩から引き下げた。解放された乳房は、熱を持ち、硬くなった乳首が真っ直ぐに前を向いている。それを指でつまみ、きつく、きつく捻ってあげる。
「んっ…!」
声が漏れた。
震える手でパンティーを下げると、案の定、黒いシルクにはっきりと濡れた染みが広がっていた。私の中心は、もうとっくに唇を開き、白い粘液をいやらしく煌めかせている。
そこに、私は自分の指を差し入れた。さっきの、ボックスシートに座っていた男。彼が、今、この場所にいて、鍵穴からでも、私のこの姿を覗いている…そんな妄想が、頭を支配する。
「見て…見てください…わたくしの、こんなところを…」
指が、ぬるぬるの壁をかき混ぜる。奥へ、もっと奥へと進むたびに、脳が痺れるような快感が押し寄せる。あの男がもし、本当にこれを見ていたら、私をただの変態で、淫乱な痴女だと思うに違いない。
ええ、そうよ。
それでいいの。
これが、本当の神崎美月。
「こんな変態で、淫乱な美月を…もっと、見て…!」
幻想の中の彼の視線が、私の絶頂への最後のトリガーだった。私は、トイレの冷たい壁に背中を預け、何度も、何度も、深く自分を慰め続けた。
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