10月12日 (日) 鏡の中の私が見つめる中で
深夜3時。分厚い提案資料の最終頁をクライアントに送信し、ようやくモニターの電源を落とす。今日の私は、数十億規模のプロジェクトを左右する冷徹な頭脳として機能した。相手のロジックの脆弱性を突き、畳みかけるように代替案を提示する。ハーバードのケーススタディで叩き込まれた思考と、実戦で磨き上げた交渉術。それが、26歳の「神崎美月」を構成する鎧であり、誇りそのものだった。
バスルームの蒸気の中に、一日中身体を締め付けていたジャケットやスカートを脱ぎ捨てていく。熱いシャワーが肌を打ち、ようやく戦闘モードだった神経が解きほぐれていくのを感じる。肌に吸い付くような黒いシルクのネグリジェを纏い、濡れた髪をタオルで拭きながら、ふと顔を上げた。
そこに、鏡の中の私と目が合った。
クライアントの前で見せる怜悧な光ではなく、熱を帯びてとろりと潤んだ瞳。そこにいるのは、戦略コンサルタントではない。ただの雌の顔をした、もう一人の私だった。
『お疲れ様。今日も完璧な仮面だったわね、美月』
鏡の向こうから、私の内なる声が響く。昼間、理性の檻に厳重に閉じ込めている、私の本能の声だ。
「…当然よ。仕事なのだから」
強がる私を、鏡の中の私は静かに見つめている。全てを、お見通しだとでも言うように。
『その仮面の下で、一日中疼いていたのでしょう? 誰にも知られず、ただ解放されることだけを夢見ていた、その淫らな身体が』
その言葉は、もはや否定しようのない真実。私の指は、まるで操られるかのように自身の身体をなぞり始める。滑らかなシルク越しに、胸の膨らみを確かめる。指の腹で優しく円を描くだけで、その中心は硬く尖り、布地を押し上げて己の存在を主張した。
『正直な身体…。さあ、その邪魔な布を取り払って、もっと感じさせてあげなさい』
囁きに導かれ、ネグリジェの真珠のボタンを一つずつ外していく。露わになった黒いシルクのブラジャーの上から、まずはカップごと鷲掴みにする。指先に当たる乳首の芯の硬さに、思わず吐息が漏れた。もう我慢できない。カップの中に指を滑り込ませると、熱く熟れた乳首が待っていましたとばかりに指に絡みつく。それを親指と人差し指でつまみ、ねじるように転がすと、子宮の奥がきゅんと収縮し、脚の付け根から甘い痺れが広がった。
手は自然と下腹部へ。スキャンティーの上から秘裂をなぞると、布はすでにじっとりと湿り、肌に吸い付いている。その中心で小さく硬くなったクリトリスを布越しに刺激するだけで、腰が勝手に震え出した。
もう、指だけでは駄目。この熱は、この渇きは、もっと硬く、大きく、冷たいものでなければ鎮められない。私は棚の奥から、ガラスでできた忠実な僕(しもべ)を取り出した。
そして、鏡の前に、これ以上ないほど大きく脚を開いて立つ。
スキャンティーのクロッチを濡れた指でゆっくりと横にずらすと、そこには恥ずかしげもなく開かれた花弁と、キラキラと透明な糸を引くほどの愛蜜で光る秘裂があった。
『見てごらんなさい、自分の姿を。なんて卑猥で、美しいのかしら』
もう一人の私の声に導かれ、私は手に持ったディルドの冷たい先端で、まずは濡れた花弁の外側をなぞった。熱い肌に触れる冷たいガラス。その温度差が、背筋に甘い戦慄を走らせる。クリトリスの突起を先端で優しく撫でられるたびに、腰が勝手に揺れてしまう。
『さあ、もう我慢できないのでしょう? その硬くて冷たいものを、貴女の熱い場所で受け入れてごらんなさい』
私は覚悟を決めた。ディルドの先端を、ぬるぬると滑る入り口にぴたりと押し当てる。ゆっくりと、ほんの少しだけ先端を埋めると、きつく締まっていた内壁がぬるりとした音を立ててそれを受け入れ、私の指先までその吸い付くような感触が伝わってきた。
焦らすように、一度引き抜き、またゆっくりと挿れる。そのたびに、吐息が熱を帯びていく。
もう一人の私の声が、私の耳元で囁く。
『焦らされているのね、可哀想に。もっと奥まで、全部欲しがっているのに』
その言葉に煽られ、私はゆっくりと、一センチ、また一センチと、私の内壁が貪欲にそれを飲み込んでいく感覚を、鏡に映る自分の蕩けた表情と共に味わった。半分ほど挿入したところで一度動きを止めると、内部の圧迫感と、まだ奥まで届かないもどかしさに、気が狂いそうになる。
「んぅ…っ、ぁ…もっと…」
私は止まったまま、ゆっくりと腰を回し始めた。ディルドの硬い側面が、内壁の柔らかなヒダというヒダを擦り上げていく。その度に、ぞくぞくと快感の波が押し寄せた。空いている方の手は、いつの間にか自らの乳房を鷲掴みにし、硬く尖った乳首を爪が白くなるほど強くつまんでいる。
『見てごらんなさい、美月。貴女のいやらしい姿を』
鏡の中の私が、冷ややかに、しかし興奮を隠せない声で告げる。
『腰をくねらせ、中のヒダがその硬い棒に絡みついて、もっと奥へと誘っているわ。貴女の指は自分の乳首を強く捏ね上げ、口はだらしなく半開きになって…あら、見て。綺麗な筋を描いて、涎が顎を伝っているじゃない。なんて淫乱な姿なの』
その言葉が、最後の羞恥心を焼き切った。私はさらに数センチ、ぐっと深くディルドを押し込む。
「あっ…!なに、そこ…っ!」
今まで触れたことのない、一段と敏感な壁に、硬い先端が強く押し付けられる。脳天を打ち抜かれるような快感に、全身が大きく痙攣した。
もう、駄目。もう、考えられない。
この快感に突き動かされるように、私は自ら腰を突き上げ――ついに、それを根元まで一気に飲み込んだ。
「あ゛ぁぁっ…!」
子宮の入り口に、硬い先端が深く、強く突き当たる。その衝撃の瞬間、無機質なガラスの感覚は完全に消え失せた。これはもう、ただのディルドではない。私の全てを理解し、私を完全に支配してくれる、**幻想の中の男性自身**だ。彼の硬さが、熱が、そして力強い脈動が、私の内部で生々しく感じられる。幻想の彼が激しく腰を打つたびに、現実の私の肉体は、よりきつく締め付け、より多くの愛液で応えるのだ。
『そうよ…! 奥の奥まで、彼の熱い楔で何度も何度も抉られている…! なんて幸せな雌なのかしら!』
内部で繰り広げられる幻想の交わりと、鏡に映る私の淫らな自慰行為。その二重奏が、私の理性の最後の糸を、ぷつりと断ち切った。
「あ…ぁっ…だめ…! かんがえ…られな…ぃ…っ!」
幻想の彼が、私の最も感じやすい場所で、灼熱を解き放った。
「わたしはっ…! ただのっ…メスにぃ…な、るぅうううっ!」
全身を貫く長い長い痙攣と共に、私は思考を完全に手放した。完璧なロジックも、輝かしいキャリアも、今はもう何の意味も持たない。鏡に映っていたのは、快感に泣きじゃくり、全身を震わせる、ただ一匹の雌の姿だけだった。

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