深夜23時。
クライアントとのヘビーなミーティングを終え、誰もいなくなったオフィスの廊下を、私のハイヒールの音だけが静かに響いていたわ。重要なプロジェクトの最終プレゼンを成功させた高揚感と、数日間にわたる極度の緊張から解放された弛緩が、私の身体を奇妙な熱で満たしていく。
「…少し、クールダウンが必要かしら」
そう独りごちて、私が向かったのは役員用の応接室。本来なら、こんな時間に立ち入るべき場所ではない。けれど、このオフィスで唯一、私の倒錯した欲求を静かに満たしてくれる聖域(サンクチュアリ)なの。
厚いガラスで仕切られたその部屋は、廊下から内部がうっすらと見える。見られるかもしれない、という背徳的なスリル。それこそが、ハーバードのMBAでも教わることのなかった、最高のスパイスなのだから。
革張りのソファに深く腰を下ろし、私はエルメスのバーキンから、小さなベルベットのポーチを取り出した。中に入っているのは、私の秘密のパートナー。最新テクノロジーの粋を集めた、手のひらサイズのローターよ。
でも、すぐには始めない。焦らすことも、快感への重要なプロセスだもの。私はまず、自分の着ているシルクのブラウスに指をかけた。一番上の、小さな真珠のボタンを、ゆっくりと外す。一つ、また一つとボタンが外れるたびに、胸の谷間が露わになっていく。ジャケットは羽織ったまま。そのアンバランスさが、私の露出欲をさらに掻き立てる。
すべてのボタンを外し終えると、繊細なレースのブラジャーが現れた。ポーチから取り出したローターのスイッチを入れる。ほとんど音を立てずに滑らかな振動が始まった。これこそが、私がこのモデルを選んだ理由の一つ。精密な制御を可能にするブラシレスDCモーター。この静音性とパフォーマンスの両立が、今の私には必須条件だわ。
そのローターで、ブラジャーの上から、左の乳首を優しくなぞる。
「んっ…」
薄い布越しに伝わる微細な振動に、すぐに乳首が硬く尖っていくのがわかるわ。fMRI研究によれば、乳首への刺激は、脳の性器感覚野において、陰核への刺激と全く同じ領域を活性化させることが証明されているの。だから、これは単なる前戯じゃない。脳への直接的なハッキングよ。
焦らされる感覚に耐えきれなくなり、私は大胆にブラジャーをたくし上げ、豊かな乳房を解放した。重力に従ってやわらかく垂れる、Fカップの乳房。それを両手で包み込むように揉みしだき、指先で硬くなった乳首を強く、強くつまむ。
「あ…ぁん…っ」
快感に声が漏れる。乳首への刺激は「愛情ホルモン」であるオキシトシンの分泌を促す。それが、これから訪れる快感の波を、より深く、多幸感に満ちたものにしてくれるの。
十分に乳首をいじめ抜いてから、ようやく私はスカートの中に手を入れた。湿り気を帯びたレースのショーツの上から、ローターの先端を、私の最も敏感な場所にそっと押し当てる。上半身は無防備に晒されたまま。この倒錯した姿で、下半身を慰める。最高の背徳感だわ。
興奮が高まるにつれて、現実と幻想の境界が曖昧になっていく。
カチャリ。
今度こそ、はっきりとドアが開く音がした。
ゆっくりと開いたドアの向こうから、人影が、一人、また一人と入ってくる。今日のクライアント、それにうちの会社の役員たちの顔が見える。幻…そう、これは私の脳が見せている、都合のいい幻。でも、私の身体は、この幻想に正直に反応してしまう。
「おい、見ろよ…神崎さん、あんな格好で…」
「すげぇ…ブラウス全開で、ブラジャーずり上げて、乳丸出しじゃねぇか…」
男たちの下卑た声が、私の耳に直接響く。あぁ、だめ。そんな言葉で、私のいやらしい姿を表現しないで。見られている。私の秘密が、暴かれていく。その事実に、身体の奥が、きゅん、と疼いた。
ショーツをずらし、濡れそぼった粘膜に、ローターの冷たい先端を直接押し当てる。
「あぁっ…んぅ…っ!」
ダイレクトな刺激と、男たちの視線に、腰がびくんと大きく跳ねる。
「うわ、乳首ビンビンじゃねぇか。自分で弄って、気持ちよさそうにしてるぜ」
「下のクリトリスも、バイブが当たってぴくぴく痙攣してるのが見える」
「なんていやらしい女なんだ。上も下もぐしょ濡れにして…」
やめて、そんな卑猥な言葉で実況しないで…! でも、私の身体は裏腹に、もっと感じてしまう。見られている、言葉で辱められている。その興奮が、脳の理性を司る外側眼窩前頭皮質の活動を完全にシャットダウンさせていくのがわかる。もう、羞恥心なんてない。ただ、この痴女の身体が求めるままに、快楽の波に溺れたい。
ローターを少しだけずらし、クリトリスを刺激したまま、その振動するボディの一部を、熱く疼く膣口にも当ててみた。外と中、二つの異なる性感帯が、同時に震えだす。
これは、いわゆる「ブレンドオーガズム」を誘発するためのアプローチ。クリトリスからの刺激は主に陰部神経を、そして膣口からの刺激は骨盤神経を活性化させる。これら複数の神経経路を同時にハックすることで、快感の信号は指数関数的なシナジーを生み出すの。
「やばい、あいつ、中も弄り始めたぞ」
「顔見てみろよ、もうイきそうだぜ。あの冷静な神崎が、こんなメスみたいな顔するなんてな」
幻想の男たちの言葉が、最後の引き金になった。外からの鋭い快感と、中からのじわじわと広がる深い快感。そして、見られながら辱められるという、最高のスパイス。すべてが混じり合い、私のすべてを飲み込んでいく。
「…っ、ぁあああああっ!イクっ!み、見ないでぇっ…もっと、いやらしい目でみてぇっ!」
矛盾した言葉が口をついて出るのと同時に、私の身体は激しく痙攣した。脳の奥で何かが弾け、視界が真っ白に染まる。陰部神経と骨盤神経から送られてきた膨大な快感情報が、私の脳を完全にジャックする。外と中、二つの源から生まれた快感の津波が、私のすべてを洗い流していく…。
「はっ、ぁ…っ、はぁ…っ…」
深い、深いオーガズムの余韻の中で、私はソファにぐったりと身体を預けた。指一本動かせないほどの、深いリラクゼーションと多幸感。
ゆっくりと目を開けると、そこには誰もいなかった。静寂を取り戻した応接室。もちろん、男たちなんて最初からいなかったのだ。私の脳が生み出した、最高の観客。
乱れたスーツを直し、ブラジャーとブラウスを元に戻す。ローションで濡れた指先をハンカチで拭う。鏡に映った私の顔は、いつもの冷静沈着な神崎美月のもの。でも、その瞳の奥には、まだ官能の熱が微かに燻っている。
オフィスという戦場(フィールド)で理性を武器に戦う私と、その理性が溶ける瞬間に最高の快感を覚える私。どちらも、紛れもない、私自身なのだから。
ヒールの音を響かせ、私は闇に包まれたオフィスを後にした。次の「プロジェクト」は、どんな観客の前で実行しようかしら…?
考えるだけで、また身体の奥が、小さく疼き始めるのだった。

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