昼は弁護士、夜は自分で選ぶ痴女。神崎美月の秘密の記録

【神崎美月の痴女日記】仮面をつけて、地下のステージへ。七人の視線の前で

11月1日(土)仮面の告白

金曜の夜十一時、六本木の裏通り。

今週は、差止めの仮処分を二件、続けて通した。裁判官の前で、相手方の疎明資料の日付の矛盾を一つずつ並べた。勝つたびに、体の奥のどこかが乾いていく。乾いたところに、何かを流し込まないと眠れない。

古いビルの地下へ続く階段には、看板がなかった。店の名前は、三週間前に、ある依頼人の雑談の中で一度だけ聞いた。調べたのは私だ。会員の紹介がないと入れないことも、土曜の深夜に小さなステージがあることも。

紹介者には、Kを選んだ。アプリで知り合って、二度食事をしただけの男。知的な目をしていて、凡庸な世辞を一度も言わなかった。それだけで十分だった。

「本当に、ここでいいのか」

階段の途中で、Kが振り返った。

私は、答えの代わりに、彼の腕に自分の腕を絡めた。

仮面

店の中は、紫の照明と、甘いリキュールの匂いで満ちていた。ソファに座った男女が、入ってきた私たちを、品定めするような目で見ている。奥に、膝の高さほどの小さなステージがあった。

受付で渡された黒いレースの仮面を、自分でつけた。目元だけが隠れる。神崎美月という名前が、顔から剥がれていく感覚があった。

今夜の服は、選び抜いてきた。紺のスーツ。その下に、黒いシルクのランジェリーと、ガーターで吊ったストッキング。パンストではない。すぐに開けるように。

ソファの男の一人が、私の胸のあたりで視線を止めた。そこで止まるように、ジャケットのボタンを一つ外してきた。

私は、Kの手を離して、ステージへ歩いた。

ステージ

照明が、一つだけ私に向いた。

観客は、七人。数えた。法廷の傍聴席より少ない。それなのに、その一人ひとりの視線の重さが、肌の上ではっきり分かった。

ジャケットを脱いだ。肩から滑らせて、足元に落とす。白いブラウスの下で、胸の先が布を押し上げているのが、照明の中で自分にも見えた。

客席の誰かが、喉を鳴らした。

ブラウスのボタンを、上から外していく。一つ。二つ。急がなかった。一つ外すたびに、客席の空気が、一つずつ重くなっていく。裁判官が判決書を一枚めくるたびに、法廷が静まっていくのと同じだった。

黒いレースのブラジャーが、照明の下に出た。

Kが、客席のいちばん前の椅子に座っているのが見えた。彼は何も言わなかった。ただ、脚を組んで、私を見ていた。

私は、彼の目を見たまま、自分の手でブラジャーのカップを下へずらした。

見せる

照明の熱が、むき出しになった胸の先に当たる。

指で、自分の先端を摘んだ。客席の七人に、よく見えるように。こねて、転がして、少し強く引く。そのたびに、腰が小さく揺れた。

「……すごいな」

客席の誰かが、つぶやいた。

スカートのファスナーを下ろした。スカートが、ジャケットの上に落ちる。ガーターとストッキングと、黒いシルクの小さな布。そこが、もう濡れて色を変えていることは、自分でいちばんよく知っていた。客席の男たちも、きっと見ている。

ステージの床に腰を下ろして、脚を開いた。

クロッチの上から、指でなぞる。湿った布が、肌に張りついて、形をそのまま浮かび上がらせている。指の腹で、いちばん硬くなっているところを、ゆっくり押した。

「……っ、ん」

声が、思ったより大きく出た。客席の息遣いが、一斉に荒くなった。

布をずらす

クロッチを、指で横によけた。

照明の下に、全部が出た。花弁は熟れて開いていて、指と肌のあいだで、透明な蜜が細い糸を引いていた。七人分の視線が、そこに集まって、熱になった。

腫れ上がった尖りに、直接触れた。

「あっ……ぅ……」

指が少し動くたびに、腰が跳ねる。見られている。自分の指で、こんなふうに乱れているところを、全部。その事実が、指の快感を何倍にもした。

客席のKと、目が合った。

私は、彼を見つめたまま、唇だけで言った。

「……K。来て。あなたが入ってくるところを、想像させて」

彼は立ち上がらなかった。ただ、ほんの少しだけ、身を乗り出した。それで十分だった。

指を、自分の中に沈めた。一本。二本。その指を、彼のものだと思った。硬く、熱く、奥まで届くもの。客席の七人の視線が、その幻の男の手になって、私の肌を撫でていく。

内側が、指をきつく締めつけた。

「……もっと、見て。……私の、おまんこ。いま、いくところ」

拍手のない喝采

奥で、熱が弾けた。

背中が反って、仮面の下で目を閉じた。何度も、何度も、腰の奥から波が来て、そのたびにステージの床で体が跳ねた。客席の誰かが、息を詰めたまま、吐き出せずにいるのが聞こえた。

痙攣が引いたとき、店の中は静まり返っていた。

拍手はなかった。拍手なんかより、ずっといいものがあった。七人が、まだ誰も、目を逸らしていなかった。

Kが、ステージに上がってきて、床に落ちたジャケットを拾い、私の肩に掛けた。

「……君は、恐ろしい女だな」

「知ってるわ」

仮面を外したのは、階段を上りきって、六本木の夜風に当たってからだった。

月曜の朝九時には、また裁判所にいる。相手方の疎明資料を、一枚ずつめくる。その指が、土曜の夜に何をしたかを知っているのは、七人と、Kと、私だけだ。

この夜の続きを、貴方も目撃する…。

昼の私と夜の私の物語は、連載『痴女弁護士・神崎美月』で続いています。新しい話のお知らせと、ここでしか読めない番外編は、メールマガジンでお届けします。

→私が味わった、あのステージの上での屈辱と快感を、貴方も目撃する…。

この記事を書いた人

はじめまして、神崎美月です。昼間は法律事務所で書面を書いている弁護士。夜の私が何をしているのかは、この場所と連載に書いています。あなたと、特別な時間を共有できたら嬉しいわ。

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