昼は弁護士、夜は自分で選ぶ痴女。神崎美月の秘密の記録

【神崎美月の痴女日記】「今日、ノーブラだった」と私から打った雨の夜

11月10日(月)曇りのち雨

また、勝ってしまった。

マホガニーのテーブルの向こうで、相手方の代理人が三人、同時に資料を閉じた。依頼人の専務が、私の横で小さく息を吐いた。「神崎先生の書面には、隙がない」。そう言われるたびに、私の中で、何かが一つずつ冷えていく。

雨の首都高を、タクシーが滑っていく。窓の外で、ネオンが滲んで、溶けていく。

膝の上で、スマートフォンを開いた。登録名は「変態さん」。アプリで知り合って三週間。顔も、名前も、職業も知らない。知っているのは、彼の言葉がひどく下品で、ひどく正確だということだけだ。

今夜は、私から打った。

『今日の和解協議、ノーブラだった』

白状

既読は、三秒でついた。

『……は?』

『シルクのブラウスの下に、何も着けてなかった。相手方の代理人が三人、ずっと私の胸元から目を逸らしてた』

『お前、それ、俺に言ってどうしたいんだ』

『命令して。家に着くまでに、考えておいて』

送信してから、窓に映った自分の顔を見た。唇の端が、上がっていた。

窓

タワーマンションの重いドアを閉めると、雨の音が消えた。

リビングの床から天井までの窓が、夜景を背負って黒い鏡になっている。そこに、ウールのタイトスカートとシルクのブラウスの女が映っていた。昼間のまま。協議のテーブルに座っていたまま。

スマートフォンが震えた。

『窓の前に立て。ブラウスのボタンを、上から三つ外せ。それ以上は外すな』

三つ。この男は、全部より途中のほうが効くことを知っている。

一つ、二つ、三つ。合わせ目から、胸の谷間と、何も着けていない肌がのぞいた。窓の中の女が、指を三つ目のボタンにかけたまま、こちらを見ている。

『写真は送らない』

私が先に打った。

『言葉だけで、して』

『……生意気な女だ。じゃあ、ブラウスを全部脱げ。窓に手をつけ。外を見ろ』

窓に手をついて

ブラウスを床に落とした。スカートも、ファスナーを下ろして足元に。ガーターとストッキングだけになって、冷たいガラスに両手をついた。

四十二階の下に、雨に濡れた街が広がっている。どの窓からも、ここは見えない。それを、私はいちばんよく知っている。知っているのに、肌は、外に晒されていると勝手に錯覚する。

『今、どんな格好だ。報告しろ』

ガラスから片手を離して、打った。

『窓に手をついて、お尻を突き出してる。ガーターとストッキングだけ。……濡れてる。協議の途中から、ずっと』

指先が、打ちながら震えていた。

『乳首は』

『触ってないのに、痛いくらい』

『摘め。指の股で挟んで、こすり上げろ。声を出せ』

報告

指の股で、硬くなった先端を根本から挟んで、ねじるようにこすり上げた。

「あっ……ぅ、ん……っ」

窓に、自分の吐息が白く広がった。片手でガラスを押さえたまま、もう片方の手で、乳房をつかむ。その指を、ゆっくり腹へ、下腹へ。

ガーターの留め具を越えて、脚の付け根に触れた。濡れきっていた。指を少し動かすだけで、粘りのある蜜が、太腿の内側を伝っていった。

いちばん硬くなったところを、指の腹で押す。腰が、窓の前で跳ねた。

スマートフォンが震えた。床に落としたまま、画面だけを見下ろす。

『中に指を入れろ。一本。どう締めるか報告しろ』

指を一本、沈めた。内側の襞が、待ちかねたように絡みついて、締めつけた。

打つ手が、もう言うことを聞かなかった。それでも、打った。

『いれた。きゅうって、しめてる。あなたの指だと思ってる』

交代

既読がついて、返事が来なかった。

十秒。二十秒。

私は、濡れた指を抜いて、スマートフォンを拾い上げた。

『あなたは、いま何をしてるの』

既読。それから、短い返事。

『……言わせるな』

『言って。私は全部報告した』

『……お前の文、読みながら、自分でしごいてる』

その一行を読んだ瞬間、腰の奥が、ずくんと鳴った。顔も知らない男が、どこかの部屋で、私の言葉で硬くなっている。

『止めて』

『は?』

『私がいいって言うまで、止めて。触らないで、待ってて』

既読がついて、何も来なくなった。止めているのだ。私の一行で。

私は、窓に額を押しつけて、もう一度、指を沈めた。

雨の夜景

一本では、足りなかった。二本。奥のいちばん弱いところを、自分で探し当てる。窓の外の灯りが、雨粒でにじんで、光の筋になった。

顔も知らない男が、どこかで、私の許しを待っている。その想像が、指の何倍も効いた。

波が、すぐそこまで来た。

床のスマートフォンを、つま先で引き寄せて、片手で打った。

『いいわ。いっしょに』

送信と同時に、奥で、熱が弾けた。窓に手をついたまま、膝が崩れた。腰が勝手に震えて、何度も、何度も、指を締めつけた。ガラスに押しつけた頬が、冷たかった。

既読

どれくらい経ったのか、分からない。

床に座り込んだまま、スマートフォンを見た。

『……お前、最悪の女だな』

その一行のあとに、もう一行。

『また、命令させてくれ』

私は、返事を打たなかった。既読だけをつけて、画面を伏せた。

明日の朝も、私は協議のテーブルに座る。シルクのブラウスの下に何を着けているかは、まだ決めていない。

この夜の続きを、貴方も目撃する…。

昼の私と夜の私の物語は、連載『痴女弁護士・神崎美月』で続いています。新しい話のお知らせと、ここでしか読めない番外編は、メールマガジンでお届けします。

→ 【言葉の支配】インテリ女性が言葉で限界まで調教される

この記事を書いた人

はじめまして、神崎美月です。昼間は法律事務所で書面を書いている弁護士。夜の私が何をしているのかは、この場所と連載に書いています。あなたと、特別な時間を共有できたら嬉しいわ。

関連記事